花姫コネクト
「なあ、それ一口ちょうだい」


 グイッと手が引かれて、食べかけの唐揚げがあっという間に姫先輩の口へ入った。

 何食わぬ顔でもぐもぐと口を動かしながら、うまっと唇を舐めている。

 か、か、間接キスじゃない!

 わざわざ箸で持っているのを取らなくても、お皿の上に手を付けていないのがあったのに。

 周りの人がこそこそと話している声が聞こえた。花を咲かせられない者同士、(みじ)めだと。

 サッと首を押さえて、小さな膨らみが見えないようにする。

 一緒にいると、逆効果だったかもしれない。姫先輩まで、可哀想な人みたいに言われてしまった。

 唇を()()めたとたん、ビーンと頬が引っ張られて餅みたいに顔が伸びる。


「なに……してるんですか?」


 少しだけ変な声になった。口が横に広がっているから仕方ない。


「変な顔だなー。笑える」


 小馬鹿にして笑うイタズラな指を払って、鼻をふんっとならす。


「姫先輩に言われたくないですよ」

「まあ、気にすんな」

「しますよ!」

 言いながら残りの唐揚げにかぶりつく。そんな私の顔を見ながら、姫先輩はまたフッと笑って。


「ああ、そうだ。放課後用事あるから。じゃあ、また明日な」


 いつの間にか空っぽになっていた皿を持って、彼は食堂を去って行った。

 その後ろ姿を見て、心がぽつりとつぶやく。

 なんだ、今日はレッスンが出来ないのか。一日でも早く咲かせたいのに、残念。
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