花姫コネクト
十分ほど歩いて着いたのは、小さなカフェ。古民家を改装して造られていて、アンティークな家具や木の雰囲気がとてもオシャレだ。
帰路が反対方向だから、学校の近くにこんな場所があったなんて全く知らなかった。
初めて足を踏み入れた空間に酔っていると、いつの間にかいなくなっていた乙谷部長がエプロンを付けて出てきた。
「さあさあ、座って。うちのおすすめ、くるみ味噌五平餅に、おぐらと桜あんのお団子ですよ。あと抹茶あんはおまけの試作品」
テーブルに並べられたデザートを見て、「おいしそーう!」と思わず体が前のめりになる。
鮮やかな彩りと甘くて香ばしい香りに食欲がそそられて……、じゃなくて!
「うちの、おすすめ?」
「なに、ここ乙谷んとこの店なの?」
テーブルへ座る姫先輩につられて、そそくさと腰を下ろす。
よく考えたら、エプロンをしている時点でおかしい。
「まだ最近オープンしたばかりで、宣伝がてらお疲れさま会をしたかったの。試作品もみんなに食べて欲しくて。それなのに、あの二年たちは……」
言いながら眼鏡の奥が光っている。
普段は大人しくて優しいのに、たまにスイッチが入ったように顔が黒いもやで包まれるから少し驚いてしまう。
場の空気を変えるために、「お、おいしそうだなぁー! いただきま……す」と抹茶の団子を口にした。
もぐもぐ頬を動かす私の前で、同じタイミングで頷きながら乙谷部長が固唾を飲んで見守っている。
「……どう?」
「……おいしい。めちゃくちゃおいしいですよ、これ」
しっかり抹茶の風味を残しつつ、ほどよい甘さがプラスされている。
「ほんと? 姫川くんは、どう思う?」
毒味が終わったなら俺も、という感じで食べ出した姫先輩へ視線が向けられた。
「ああ、うまいよ」
「よかったぁーー」
へなへなと机へ崩れた乙谷部長は、見たことのないような安心した表情をしていた。
帰路が反対方向だから、学校の近くにこんな場所があったなんて全く知らなかった。
初めて足を踏み入れた空間に酔っていると、いつの間にかいなくなっていた乙谷部長がエプロンを付けて出てきた。
「さあさあ、座って。うちのおすすめ、くるみ味噌五平餅に、おぐらと桜あんのお団子ですよ。あと抹茶あんはおまけの試作品」
テーブルに並べられたデザートを見て、「おいしそーう!」と思わず体が前のめりになる。
鮮やかな彩りと甘くて香ばしい香りに食欲がそそられて……、じゃなくて!
「うちの、おすすめ?」
「なに、ここ乙谷んとこの店なの?」
テーブルへ座る姫先輩につられて、そそくさと腰を下ろす。
よく考えたら、エプロンをしている時点でおかしい。
「まだ最近オープンしたばかりで、宣伝がてらお疲れさま会をしたかったの。試作品もみんなに食べて欲しくて。それなのに、あの二年たちは……」
言いながら眼鏡の奥が光っている。
普段は大人しくて優しいのに、たまにスイッチが入ったように顔が黒いもやで包まれるから少し驚いてしまう。
場の空気を変えるために、「お、おいしそうだなぁー! いただきま……す」と抹茶の団子を口にした。
もぐもぐ頬を動かす私の前で、同じタイミングで頷きながら乙谷部長が固唾を飲んで見守っている。
「……どう?」
「……おいしい。めちゃくちゃおいしいですよ、これ」
しっかり抹茶の風味を残しつつ、ほどよい甘さがプラスされている。
「ほんと? 姫川くんは、どう思う?」
毒味が終わったなら俺も、という感じで食べ出した姫先輩へ視線が向けられた。
「ああ、うまいよ」
「よかったぁーー」
へなへなと机へ崩れた乙谷部長は、見たことのないような安心した表情をしていた。