花姫コネクト
「実はこれ、私がアイデア出したもので。まだ二人にしか食べてもらってないし、メニューとして出すにはまだ早いのだけど、ゆくゆくは……って思っているの」

「ええーーっ! これ、乙谷部長が考えたんですか?! すごいです! そんな大切なもの、私たちで良かったんですか?」


 興奮気味に話す私の横で、少し頬を赤らめた顔を机で半分隠しながら。


「……ありがとう。その、私……友達いないから。姉以外に、あなた達にしか頼めなくて」


 眼鏡の奥が揺れていた。瞬きをするたびに潤っていくまつ毛が、全てを物語っている。

 さっきの〝良かった〟は、おいしいに対してだけの言葉ではなかったんだ。


「あーあ、腹減った」


 五平餅を頬張り出した姫先輩を見て、桜あんの団子を口に入れる。

 春の香りが充満して幸せな気分になった。


「これもすっごくおいしいです。また、食べに来てもいいですか?」


 少し驚いた目をしながら、乙谷部長はにっこりと微笑む。


「もちろん。いつでも遊びに来て下さい」

「ちなみに、ずっと気になってたんですけど。私の名前……、王子じゃなくて大路です」

「ええっ?! ご、ごめんね。姫川くんが呼んでるから、てっきり……」

「全て姫先輩の責任です」

「おい」

 桜色をした小さな花が、きらきらと笑う耳元で可愛らしく揺れていた。

 もし誰かの特別になれるとしたら、どんな気持ちになるのだろう。

 誰かの笑顔を守りたくなる感情が、今なら少しだけ分かる気がした。
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