花姫コネクト
 ゴールデンウィーク明けは、季節がすっかり夏を迎え入れたように日差しが強くなった。

「なんで分かんねーかな」
「仕方ないじゃない。いいから、続き教えて下さいよ」
「……そんなに早く咲かせたいか?」
「それはもう一秒でも早く」

 向かい合わせに座る机に、ずいっと体を前のめりに出す。
 コロコロと転がって行ったシャーペンを手のひらで止めて、だるそうな顔をする姫先輩は問題集に目を向けた。

 グレーと青で統一された空間には、今座る小テーブルの他に勉強デスクとベッドがある。

 初めて入った男子の部屋に、緊張していないわけではない。

 そもそもこうなったのにも理由があるわけで、姫先輩の発言から始まったのだ。


 昨日の放課後の部室。いつものようにレッスンを開始しようとして、ぽつりと落とされた言葉。

「王子さ、もうちょい頭よくなったら?」
「……はい?」
「自分のレベル上げたら、モテるんじゃねってこと」
「私がバカだって言いたいんですか」
「え、学力あんの?」

 テスト五科目の平均、四十八点。
 ……ムカつくけど、何も言えない。

 閉じてしまった口を見て、机へ背を預ける姫先輩がのんきに飴玉を舐めながらつぶやいた。

「知的な美少女って、年下だけじゃなくて年上からも人気あるだろうなー。知的な美少女な、美少女」
「そこは復唱(ふくしょう)しなくていいです」

 ぷいっと唇を(とが)らせて、出していた花咲きリストを眺めた。

 今までしてきた胸キュンシチュエーションと、これから試すものを書き出した文字が(むな)しく映る。
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