花姫コネクト
 震え出した手の上に、大きな温もりが伝わってくる。優しく握られた手の感触に、一瞬で頬が熱くなった。

 どうしていいか分からなくて、電源の落ちたロボットみたいに動けなくなる。


「……実は僕、小さい頃は暗いところが苦手で。大雨とか台風が来る日は、いつも姉さんに手を繋いでもらってた」

「……高嶺くんが? 想像……つかない」

「情け無いでしょ。風を止めてくれるわけでもないのに、ひとりじゃないって思うと安心出来た。人の肌って不思議だよね」

 ほんとうに不思議。初めは熱を帯びていた手が、今は柔らかな陽だまりのように思える。

 怖いことに変わりはないけど、安心するというか。高嶺くんがいるから、大丈夫だって言い聞かせられた。


 ゆっくりまぶたが閉じていき、夢の中に迷い込む。
 花に囲まれた世界で、優しく笑いかける口元が映る。おひさまの光で顔がはっきり見えない。

 王子さまのようなこの人は、誰なのだろう。

 木漏れ日を浴びたような眩しさと、小鳥のさえずりで目が覚めた。あと、誰かが名前を呼ぶ声とで。


「……あの、大路さん……、起きて」

 鼻も頬もくすぐったい。ねこじゃらしで遊ばれている猫の気持ちが、今なら少しだけ分かる気がする。

 まだ開き切らない(まぶた)を持ち上げて、ゆっくり瞬きをした。
 今日も藤色の花が綺麗だなぁ……なんてのん気に思って、ーーハッと気付く。


「おはよう。ちゃんと眠れた?」

 すぐ耳元で広がる穏やかな声に心臓を揺さぶりながら、「おかげさまで!」と距離を置く。

 腕なんか絡めて、高嶺くんの肩にうずくまって寝ていたとは、自分の無意識行動に恐怖を感じる。

「あの、ごめ……」
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