花姫コネクト
 一人残されたリビングのソファーに、寝そべってスマホを見つめる。

 スクロールするたびに、おしゃれなケーキやアクセサリーが目に入って、乾いた唇から息がもれた。


「なーんか良いことないかなぁ」

 テレビから聞こえてくる笑い声が(わずら)わしく思えて、電源を切った。
 雑音の途切れる音が、ぷつんと寂しく響く。

 ーー私の誕生日なんて、誰も覚えてくれていない。


 Tシャツとデニムに薄手のカーディガンを羽織って家を出た。
 木の多い近所一帯は、日陰ばかりで少しだけ肌寒く感じる。

 石畳みの坂を下りながら、ふと空を見上げてみると、雲ひとつない青空があった。


 なんとなくバスに乗り、駅のあたりをふらふら歩いて。ただ時間を稼ぐように本屋で立ち読みをする。

 この本、つまらないな。
 十分もしないうちに飽きてしまって、ケーキ屋のショーウィンドウをかぶりつくように眺めたあと、ドーナツ店の前でしゃがみ込んだ。

 中学生にもなって、なにやってるんだろう。

 無意識に動く指は、新聞部の連絡手段にしているグループトークを開いていた。

 〝姫センパイ〟の名前を押したとたん、「あっ」という声が頭上から降ってきて。見上げた先には、見慣れた気怠(けだる)げな顔が立っていた。
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