花姫コネクト
 カウンターの奥からもう一人、女の人が出てきた。
 ふわりとした髪をひとつにまとめた落ち着きのある雰囲気で、手には抹茶色をした小ぶりのケーキを持っている。

「うちのメニューにはないから、見よう見まねで作ったものですけど。どうぞ召し上がって」

 一番上のお姉さんだという冬妃(ふゆき)さんが、続けて色とりどりのお団子やフルーツ大福も出してくれた。

 ケーキの前に連れられて、ハッピーバースデーを熱唱されるなか、ろうそくに灯った火を吹き消す。少し恥ずかしげで、控えめに。

 こんな風にお祝いされたの、何年ぶりだろう。風吹(ふぶき)が産まれてからは、なかった気がする。


「ああー、腹減ったぁー」

 ケーキに伸びた手を、すかさず乙谷部長が阻止して。

「これを一番最初に食べるのは、大路さんって決まってるの」と眼鏡の奥を光らせるから、飲んでいたりんごジュースを吹き出しそうになった。

 面倒くさそうに、姫先輩はへいへいとフォークを引っ込める。
 周りから笑い声が飛び交って、まるでお祭りみたいに騒がしい。

 みんなの笑顔を見ていると、こっちまで胸の奥が温かくなってにやけてくる。不思議だ。


「……華」

 は……な?
 呼ばれて横を向いたとたん、ぽかんと開いていた口に甘くてまろやかな食感が入ってきた。

「……ん、せんぱ」

 さっき取った生クリームを食べさせて、そのまま自分の皿にあるものを口にする。

「これで俺も食える」

 なんともないような顔で、フォークを共有している。嫌いだったら、そんなことしないよね?

 姫先輩の考えていることが見えなくて、少しだけそわそわした。
 
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