花姫コネクト
 席へ着くとすぐ、隣に座る高嶺(たかね)くんが声を掛けて来た。


「大路さん。悪いんだけど、現文の教科書忘れちゃって。一緒に見せてもらえるかな?」


 申し訳なさそうに形の綺麗な眉を下げる彼に、いいよと返す。

 高嶺くんが忘れ物をするなんて珍しい。

 頭が良くて、おまけに顔もカッコいいから高嶺くんはクラスで人気がある。

 そんな彼と隣になれただけでもラッキーだと言われていたのに、まさか机をくっ付ける日が来るとは思わなかった。

 今の会話を隣で聞いていた彩葉(いろは)ちゃんが、こつんと私の腕を突いて。

「やったね」とニヤリ笑いながら自分の場所へ戻って行った。

「うん」と笑い返すけど、イマイチ分かっていなかったりする。

 好きじゃなくても、イケメンだからと喜ぶものなんだろうか。


 一限目の現代文の授業中。いつもより近い距離にある高嶺くんの席。

 肩が触れるとまではいかないけど、まとう空気が彼を感じさせている。

 あれだけ姫先輩と接近して咲かない花に、少しばかり期待してしまう。

 高嶺くんのことを好きになったら、みんなみたいに蕾が開くかもしれない。
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