花姫コネクト
***

 クラスの女子が声をそろえて(うらや)む席を、初めて変わりたいと思った。

 お互いに気まずさを拭えないからなのか、目が合ってもすぐ()らして。

 心の中でカウントしても、今まで普通に話せていたことが出来ない。

「それどうなの? 花咲いてないってことは、好きじゃないのに付き合うってことじゃん。私なら絶対やだ」


 体育の授業は、隣のクラスと合同だから女子の噂話を聞く機会が増える。
 すなわち必然と要らない情報まで耳に届くのだ。

「その人って、絶対に女たらしでしょ。女子なら誰でも良いんだよ、ぜったい」

「そうそう、友達が女子ばっかって塾で有名。あの子も分かっててバカだと思う」

 知らずのうちに、ジリリと地面を踏みしめる足に力が入っていた。

 もう……、やめてよ。
 その人の気持ちは、本人にしか分からない。勝手な憶測(おくそく)で、言いたい放題言わないで欲しい。

「恋は盲目ってやつになっちゃってるんだね。なんのために恋咲き花があるのか分かってるー? って教えてあげたい」
「分かる」

 鼻につく高笑いが、胸の奥まで響いて来て。自分へ向けられた刃のように入ってくる。

 他の人からしたら、きっと私も同じように見られるんだ。
 花が咲かなくても、たとえ恋じゃなくても、好きであることに変わりないのに。

 誰も傷付けないで、正しい選択をするのは難しい。
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