花姫コネクト
「……なんで。なんでそんなに、冷静でいられるんですか? みんなから遅れてるって、陰口言われてること知りませんか? 恋をしたことがない人は、人の感情がないらしいですよ」

 ギュッと握ったこぶしに、力がこもる。

 クラスメイトも、家族や先生も直接は言ってこない。いつか咲く日が来るから大丈夫だよって、笑って話す。

 でも、心の中では思っているんだ。

 ーー私が華ちゃんじゃなくて良かった。誰かを好きになることが出来ない可哀想な子。
 あの子は、人の気持ちが分からない人間なんだーーって。


「まだ十四だろ? 好きなヤツ出来ないなんて、そんなの普通。こう考えたことねーの?」

〝みんなが走って先を行ってるだけ。
 俺らは、ゆっくり道草しながら歩いてる。だから他の奴らが恋にうつつを抜かしている間、違う景色を見つけて楽しめる〟

 頭を過ったこともなかった。置いていかれているとばかり思って、みんなの背中しか見ていなかったから。

「……十四歳って、まだ子ども?」
「当たり前だろ。酒もタバコも出来ねーし」
「じゃあ、いつから大人なの? 甘えちゃいけなくなるのは、何歳から?」


 ーー華は、大丈夫だもんね。もう中学生のお姉さんだから。
 お母さんがいなくても、しっかり頑張れるね。

 小学校を卒業した時。ネイビーのスーツを着たお母さんは、まだ一歳になる前の風吹を抱えて笑って言った。

 卒業おめでとうのあとに、よく勉強も頑張ったと褒められて、付け足しのように呪文が唱えられたの。

 ふーちゃんはお母さんがそばにいないと生きていけなくて、仕事が終わってからはずっと付きっきり。

 宿題を見て欲しくても、あとにしてと言われたきり忘れられて。そのままひとりで解決することも少なくなかった。

 頻繁に入院するようになってからは、一週間会えないのなんてざらにあって。
 たまに顔を見ても、忙しそうにしているから私が引くしかない。

 ーーほんとは、もっと話したい。学校どう? って聞いてもらいたい。私のことも、抱きしめて欲しい。
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