花姫コネクト
lesson5. 幼馴染とは、最強の堅書きなのです
「ごめんなさい。高嶺くんの気持ちは、すごく嬉しかったんだけど」
「うん」
「その、見ての通り……、私は誰かを好きになったことがなくて。だから」
「分かってるよ。大路さんの言いたいこと。僕とは付き合えないって、ことだよね?」

 爽やかな風が吹き付ける昼休み。人影のない裏庭で、心苦しい台詞にこくりと(うなず)く。

 高嶺くんは笑って、そんな顔しないでと言うけれど、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「初めから、付き合いたいと思って告白したわけじゃないから。せっかく仲良くなれたのに、話せなくなるのはいやだな」

「ごめんね! 普通にしようと思ったけど、意識しちゃったら出来なくて……」

 この数日間、どう伝えるべきかを考えながら、気まずさから結果的に避けるような態度を取っていた。


「僕の方こそ、いきなり困らせること言ったなぁって思ってた。また、前みたいに話してくれる?」

「……私も、高嶺くんと友達でいたい」

 正直ほっとした。
 断ったら、元の関係には戻れないと思っていたから。

 時間差をつけて教室へ戻ると、すでに高嶺くんは自分の席にいて、私は周りに気付かれないよう小さく深呼吸をして隣へ座った。


「華ちゃん、どこ行ってたの? 急にいなくなるから探したよ」

 戻るなり彩葉(いろは)ちゃんが駆け寄って来て、一緒に話していた友達も後ろから付いてくる。


「ごめんね。えっと、トイレに」
「それより、聞いて聞いて!」

 言いかけてすぐ、彩葉ちゃんの声に話を(さえぎ)られた。重要なのは、私がどこにいたかじゃなくて、ここにいなかったことみたい。


「明日、転入生来るらしいよ! さっき職員室で先生が話してるの、さあちんが聞いたって」
「そうなんだね」
「どんな子か緊張するねー。楽しみ」

 高嶺くんと二人でいたことを知られたくないから、言い訳を考える時間が増えて助かった。
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