花姫コネクト
「これからは、もっと聞くようにするから。考えすぎないで言って? 遅くなるなら、ちゃんと連絡しなさい」
「……ごめんなさい」
「ううん、お母さんもごめんね」

 ずっと胸につっかえていたものが取れて、すっきりした。
 思うだけじゃなくて、もっと早く話していれば良かったんだ。

「危ないから、姫川くんも送って行くわよ」
「すぐそこなんで大丈夫です。じゃあ、俺はこれで」

 軽く頭を下げて去ろうとする背中に、

「ーーあの、先輩っ!」


 言わなきゃ。ちゃんとお礼を言わなければ。
 ぐっと結んだ唇をゆっくり開けて、息を吸い込む。

「ありがとう……ございました」

 振り返った表情は、私の気持ちをキャッチしたと言うように、瞳を三日月の形にして笑った。
 そっと顔を近付けて、私だけに聞こえる声で。


「言えてよかったな」

 ぼそっとささやかれた言葉は、しばらく耳に残って離れなかった。

 花咲きレッスンでは分からなかったこと。
 姫先輩の声って、透き通るように響いて心地いい。

 あれだけ至近距離で胸キュンシチュエーションをしていたのに、気付かなかった。

 思っている以上に、姫先輩はかっこいい人なのかもしれない。
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