花姫コネクト
 休み明けの学校。ひと気のないトイレで鏡を覗き込む。
 一向に花が咲く気配はなく、今日も変わらぬ姿をしている。

 もしかしたらと思ったのに、この蕾からは開こうという意欲が感じられない。
 接着剤でくっつけられているのかと問いたくなるくらい。

 姫先輩に対して生まれた感情は、単なる思い過ごしだったのかな。

 ちょこんと膨らみに触れてみて、おーいと話しかけてみる。

「でも、君のおかげで先輩と仲良くなれたんだもんね。悪いことばっかじゃないね。感謝してるよ」

 ツーンと触って、鏡の前で微笑んで、(はた)から見たら変な人だ。
 でも、いいの。ちょっとだけ分かったから。

 人と比べなくていい。自分なりに歩いていけば、みんなが見落としてしまう景色を見つけられるかもしれないって。


 まだ誰もいない放課後の部室。換気のために窓を開けると、少し離れたところに姫先輩を見つけた。
 木の陰に突っ立って、何してるんだろう。

 おーいと手を振ろうとして、上げかけた手をゆっくり下ろす。

 女の子と一緒だった。
 ふわっと髪が長くて可愛らしい子。スカーフの色が白だから、たぶん三年生だ。
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