花姫コネクト
 新聞部の作業が終わると、他の部員が帰るのを待って部室に鍵を掛ける。

 二人きりの空間を作って、本日も花を咲かせるためのレッスンを始めた。


「さて、今日は何をしてもらいましょうか」


 机に置いた少女漫画を、目の前に座る先輩の前へ一冊ずつ丁寧に並べていく。

 甘い胸キュンから少し(きわ)どそうなものまで全十冊。

 その度に揺れる耳下の花は、いつも通り行儀よく閉じている。

 長いため息をついた姫先輩が汚いものを触るように、親指と人差し指で紙の(たば)をつまんだ。


「うわぁ……これ、なんかヤバそう。お前、年齢的に大丈夫?」

「言っておきますけど、健全(けんぜん)とした少女漫画しか読んでないですから。変な持ち方しないでっ」


 姫先輩の手からパッと漫画を(うば)うと、へいへいと気怠(けだる)げな反応が返って来る。

 そういう彼も、生やす花はツボミのままだ。


「もういい加減咲かせたいんですよ。クラスのほとんどが三分(さんぶ)五分咲(ごぶざ)きだし、すごいと七分(しちぶ)咲きもいるんですよ」


 彩葉(いろは)ちゃんだって彼氏が出来た。私だけ取り残されていく。
< 7 / 133 >

この作品をシェア

pagetop