花姫コネクト
「よくよく聞いたら、恋したのは友達でね。よっぽど嬉しかったのか、自分のことみたいにはしゃいでて。その子が相手の男の子にお菓子をあげるらしいから、私も友達にあげるって言うの。お祝いだからって」

「そんなこと言ってたんだ。全然、記憶にないなぁ」

 サクッと音を立てて、ハッとよみがえる。
 このクッキーは、花姫だ。誰かにあげたことがある。可愛くラッピングをして、渡した。

 その子が幸せそうに笑うのを見て、恋をしたらこんなに可愛くなれるんだと羨ましくなった。
 誰でも花姫になれるんだと、子どもながらに胸を膨らませたことを思い出した。

「で、友達の恋に喜んでた華が。花を咲かせたのに、どうして浮かない顔してるの?」

 勘付かれないと思っていた。普段通りにしているつもりだったから。

 クッキーを持つ手に、ポタポタと水の玉が落ちる。止まれ、と瞬きをするたびに、粒は大きくなっていく。

「先輩……咲かせちゃった。やだ、他の子……好きになってほしくない」

 涙まみれの顔を、優しく手がそっと抱き寄せる。
 そっかそっかと撫でられた頭は、悲しみを紛らわすように温かくて。もっと目頭を熱くする。

「花が好きだった花姫も、悩んで毎晩泣いてたっけ。いろんな感情を知って、みんな強くなるの。気が済むまで、今はいっぱい泣けばいいよ」

 我慢出来るはずなのに。おかしいな。
 最近、気持ちが隠せなくなっている。
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