花姫コネクト
「こんなとこで、何してんの? 部活、今日もサボる気か?」

 いつも通りのけだるげな口調。
 理由を探してまで避けていたのに。こんな所で会わせるなんて、神様は意地悪だ。

 お願い、聞かないで。触れないで。

 合っていた姫先輩の視線が、ふと横へスライドする。開いた花をとらえたであろう瞳は、少しだけ大きくなった。

「王子、それ……」

 ビクッと肩をすくめると同じくらいに、

「なあに? この子、王子くんって言うの?」

 姫先輩の後ろから、誰かがひょこっと顔を出した。

 ふわふわした髪と綺麗に整えられた眉。ぱっちりした瞳の下には、小ぶりの鼻と口が付いている。ツルツルした白い肌は、まさしく。

 ーー花姫だ。
 見た瞬間、そう思った。


「キレイな顔。王子ってぴったり」
「いえ、僕では……」

 勘違いしているようで、その子は高嶺くんを見てにっこりと笑った。
 笑顔もきらきらしていて、なにより真っ赤な花が華やかさを際立てている。

 あれ、この人って……。

「そっちは高嶺悠晴。王子ってのは、こっちの大路華。二人とも、俺の後輩」

 色素の薄い瞳がこちらを見て、万華鏡(まんげきょう)のように揺れている。
 やっぱり間違いない。この子、あの日姫先輩と一緒にいた三年生だ。
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