花姫コネクト
「王子って女の子のことだったの? (きょう)、ひどーい」

 立っている先輩の体を押して、仲むつまじそうに振る舞う。

「メルだよ、河合(かわい)芽瑠(める)。まだ帰国したばかりなの。よかったら仲良くしてね」

 本を抱えて動けないでいると、語尾にハートが付けられた挨拶を受けた。

 なんだろう、さっきから胸が苦しくて息がつまりそう。

「小四までこっちにいたのに、お互い覚えてねーんだな。小学校、一緒だったけど」
「……記憶にない」
「うーん、あっ! もしかして、お姉さんいない? ランドセル二つ抱えて歩いてた」
「えっ……、はい」
「あの時の男の子? 悠晴くん、かっこよくなったね」

 小さな子どもにするように、なんの迷いもなく高嶺くんを抱きしめた。
 見ていたこちらが赤面して、顔を背ける。

 やめて下さい、と高嶺くんの慌てた声が聞こえてきて、河合さんが笑っている。

「悪ノリするなよ」
「向こうでは、みんなすぐハグしてたから。くせになっちゃってるの。ごめんね」

 心臓が落ち着かない。
 そわそわ、ぐらぐら揺れて飛び出そうになる。
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