花姫コネクト
 この二人の距離感は、普通じゃない。ただの知り合いではなくて、近い言葉を借りると、

「メルは幼馴染なんだ。変わったヤツだけど、まあ仲良くしてやってくれ」

 少女漫画で見るような、唯一無二(ゆいいつむに)の存在。

 幼い頃から(きず)き上げられた関係は、深くて強く。友情以上の特別な絆で結ばれている。

「そういえば、花……」
「体調、悪くて。しばらく、部活、休みます」

 姫先輩の声をかき消すように、荒くなった呼吸で言葉を(つら)ねた。

 本を置いたまま図書室を出て、トイレへ駆け込む。
 誰もいない鏡の前で、真っ白な花を写しながらニッと笑ってみせる。

「ヘンな顔……。可愛い幼馴染が帰って来たら、そりゃ咲いちゃうよ。勝てっこないもん」

 呼び捨てで呼び合っていた。
 あの二人には、私の知らない時間を共に過ごしてきた過去がある。きっと、壊せない壁がある。

「なんで好きになっちゃったんだろう」

 茎をキュッと引っ張ると、付け根の皮膚が伸びた。もう少し力を入れたら、じわりと痛みが強まる。

 パッと離した手のひらを、そっと胸に当てた。ずっとずっと、締め付けられている。
 耳なんかより、ずっと痛いのは胸の方だ。
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