花姫コネクト
「人のいない図書室って、気が安らぐんだよね。誰にも邪魔されない。自分の世界でいられるっていうか」
「それ、分かる気がする!」

 思わず体が前のめりになる。同じことを考えていたなんて、テレパシーみたいですごい。

「僕、一年の時も図書委員してたんだ」
「本好きなんだね」
「読みはしてたけど、続けようと思ったのはこれがあったからかな」

 生徒手帳から取り出したのは、花の形をしたラベンダー色の付せんだった。

 これを見つけたあなたはラッキーさんです!
 これから大変でつらい時、悔しくて泣きたい時が来るかもしれません。
 でももう少し踏ん張ってみて。
 あきらめるのは、いつでも出来るから。
 頑張ってるところ、誰かは見てくれてるよ。

 その付せんに見覚えがあった。一年の時、私が持っていたものと同じだ。
 新聞部で作業する時も使った記憶がある。

「連休明けに、貸し出しの机でたまたま見つけて。分からないけど、捨てられずにまだ持ってる」

 思い出した。なかなか良い文章が書けなくて、煮詰まった時にらくがきしたこと。

 まさか、高嶺くんに拾われていたなんて思いもしなかった。休み明けには、すっかり忘れていたから。

「なんか……ポエムみたいで、恥ずかしいこと書いてあるね」

 自分が書いたなんて告白出来ないから、人ごとのように話してみる。

 今見ると、恥さらしもいいとこだ。たとえ口をこじ開けられようとも、言えない。
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