花姫コネクト
「中二にもなって、恋したことないのかーって、クラスの男子にからかわれたんだっけ。花の王子なのにな」

大路(おおじ)(はな)です! 今、名前に触れないで下さい。余計に気分下がるので」


 ぷんとした態度で姫先輩の隣へ腰を下ろす。

 嫌なことを思い出させてくれる人だ。

 漫画を手に取り、もう片方を私の肩へ回す彼へ人差し指を向ける。


「自分だって人のこと言えないじゃないですか。姫って……、姫って付いてるくせして、まだ咲いたことないんだから」


 重要なところなので復唱して。

 言ってすぐ顔が近付けられる。耳元まできた唇からささやくような甘い声が繰り出された。


「ほんとは、前から好きだったんだ」


 吐息が触れた部分がむずがゆくなって、我慢しようと思えば思うほど身震いが起きる。

 もう、無理だ。勢いよく彼を押し退けて、体をよじった。


「や、や、だめ。耳が、くすぐったすぎる!」


 あははと色気のない笑い声を上げて、「どう? 咲いた?」と準備してあった手鏡を(のぞ)いた。


「ザンネーン。ぴくとも動いてねーよ」
「マジか……これもダメですか」


 変わり映えのない蕾を見て、がっくりと肩を落とす。

 壁ドン、顎クイ、肩ズン。
 胸キュンシチュエーションをいくつも試してきてこの結果(ありさま)

 ときめくと好きは別物ものなの? 何が違うの?


 一生好きな人なんて現れない気がする。
 悩みの種にしかならない恋咲き花なんて、なければいいのに。
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