花姫コネクト
「待って、私も一緒に帰っていい?」

 鍵を閉め終えた乙谷部長に、軽く腕を引かれる。いつもならそんなことしないから、少しだけ驚いた。

「えっ、もちろんです」

 目を丸くした私を見て、そっと顔を近付ける。

「実は、試作品だった抹茶のお団子がメニューに出してもらえることになって」
「わあ、すごいです! おめでとうございます!」
「一番最初に、大路さんに伝えたくて。実を言うと、部活中もそわそわしちゃったの」

 前を歩く姫先輩の腕に、河合さんの手が伸びる。やめろと言われながら、ぴっとりと体を寄せていく。

 アメリカ帰りだから、それとも幼馴染だから。理由はどっちでもよくて、見たくなくて視線を斜め下へ落とした。

「よかったら、また遊びに来てね。物語考える時にでも」
「高嶺くんと……行きますね」

 上手く笑えているかな。
 心は嬉しいはずなのに、唇が引きつって下がろうとする。

 歩き始めていくらもしないうちに、乙谷部長が手を振って遠のいて行く。方向が違うから仕方ないのだけど、もう少しいて欲しかった。

 誰かと話していないと、二人の会話や距離感を意識してしまうから。

 こんなみにくい感情を知るくらいなら、花なんて咲かなかった方がよかった。
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