花姫コネクト
「あとね、意外と恥ずかしがり屋で可愛いとこあるんだぁ。あのキャラで赤くなったりするの。キスした時、とか」
「変な言い方すんな。いつの話してんだ」
河合さんの頭が揺れる。戻って来た姫先輩が、ぽんっと押したから。
頬が桜色に染まって、唇がツンととがる。
「だって、メルのファーストキス奪ったの響だもん」
「だから! あれは事故……」
「……お、お邪魔しました」
机に手を付いて、いきおいでくしゃけたノートを抱えると、そのまま走り去る。
「えっ、おい」
掴まれた腕を振り払って、振り向きもしないで家を出た。
まだ明るさを残す空の下を、ひたすら駆ける。何も考えない。考えたら終わり。
言い聞かせながら、頭を占めるのはさっきの会話。
別に、くすぐってることが嫌なわけじゃない。ファーストキスだって、たぶん幼い頃の話だろう。そんなことは重要じゃなくて。
ただ、二人の空気感に耐えられなかった。
河合さんは、私の知らない先輩をいくつも知っていて、見えない積み重ねの繋がりがある。
「うっわぁっ!」
急ぎすぎたのか、足がもつれて派手に転んだ。ひざがひりひりと痛む。
擦りむいたところから、じわりと血が垂れていた。
「……はは、ついてないなぁ」
アスファルトに散らばったかばんの中身を拾い集める。
横を通り過ぎていく自転車は、避けるだけでこちらへ見向きもしない。
声をかけて欲しいわけではないけど、何台も続くと虚しくなってくる。
ーーああ、なんかもう。
「……邪魔すぎでしょ、私」
「変な言い方すんな。いつの話してんだ」
河合さんの頭が揺れる。戻って来た姫先輩が、ぽんっと押したから。
頬が桜色に染まって、唇がツンととがる。
「だって、メルのファーストキス奪ったの響だもん」
「だから! あれは事故……」
「……お、お邪魔しました」
机に手を付いて、いきおいでくしゃけたノートを抱えると、そのまま走り去る。
「えっ、おい」
掴まれた腕を振り払って、振り向きもしないで家を出た。
まだ明るさを残す空の下を、ひたすら駆ける。何も考えない。考えたら終わり。
言い聞かせながら、頭を占めるのはさっきの会話。
別に、くすぐってることが嫌なわけじゃない。ファーストキスだって、たぶん幼い頃の話だろう。そんなことは重要じゃなくて。
ただ、二人の空気感に耐えられなかった。
河合さんは、私の知らない先輩をいくつも知っていて、見えない積み重ねの繋がりがある。
「うっわぁっ!」
急ぎすぎたのか、足がもつれて派手に転んだ。ひざがひりひりと痛む。
擦りむいたところから、じわりと血が垂れていた。
「……はは、ついてないなぁ」
アスファルトに散らばったかばんの中身を拾い集める。
横を通り過ぎていく自転車は、避けるだけでこちらへ見向きもしない。
声をかけて欲しいわけではないけど、何台も続くと虚しくなってくる。
ーーああ、なんかもう。
「……邪魔すぎでしょ、私」