花姫コネクト
 三日ぶりに学校へ行った。このままではいけないと思ったから、重い体を起こして。

 なんだ、来たの? 程度な態度で見られて、正直居心地は良くなかったけど、授業以外はほとんど図書室へ行くようにした。

 高嶺くんがいてくれるから、教室で浮いていても不思議と寂しくはない。

「それいいアイデアだね! じゃあ主人公は……」

 久しぶりにカフェへ足を運んで、物語の話し合いをする。メモした文字がぼんやりとして、ゆらゆらと宙へ浮かび上がった。

 えっ、なにこれ?

 その少女は、いつもひとりぼっちでした。誰からも認識されなくて、話すことも出来ない。だけど、にこにこ笑っている不思議な子。
 透明になってしまった代わりに、少女は恋を知ったのです。

 目の前を漂う文章が、私の中に吸い込まれて行く。

 どくん、と波打つ心臓。胸がギュッと締め付けられて苦しい。

「少し休む?」

 ほぼ口を付けていない溶けた氷のグラスを、乙谷部長が変えてくれた。ここへ来て、すでに一時間が過ぎたらしい。

「何をやっても上手くいかない時って、どうしたらいいんでしょう」

 気付いたら、そんなことを口に出していた。

 目の前に座る乙谷部長、それから高嶺くんが首をひねりながら黙り込む。

「誰だってそういう時、あるよ。私なんてしょっちゅう落ち込んでる。前に進もうと思えない時は、とりあえず……和菓子のこと考えてるかな」

「……和菓子、ですか?」
「そう、面白そうなメニューとかね」

 言いながら、乙谷部長は机にあったノートを開く。そこには、たくさんの和菓子の絵と文字がぎっしり詰められていた。

「好きなことやってると、気が紛れるの」
「それ、分かります。僕も本読んだり、あとは弓道で思い切り晴らしたり」
「ストレス発散になるよね。大路さんは、何か好きなことないの?」

 とくん、と胸が波打つ。

「好きな……こと」

 みんながすらすら出てくるような、自分にとっての特別なものってなんだろう。
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