花姫コネクト
lesson6. 特別ってなんですか?
 三年生が引退して、新聞部は私を含めて五人になった。それなりに手伝ってくれるから、部長の仕事も苦ではない。

 他に女子がいないのは、心細くもあるけど。

 部室の窓を閉めて、鍵を掛ける。レッスンをする必要がなくなったから、終わればそのまま帰宅する。

 あれ……放課後って、こんなに静かだったかな。

 歩く度にぴょこんと動く白い花は、何かを探すみたいに左右へ揺れていた。

 手を振り払ったあの日から、姫先輩とは会っていない。
 故意に避けているわけじゃないけど、タイミングが合わなかった……とでも言っておこう。

 つらい時は、立ち止まっていいよ。
 君には僕たちがいるから。
 一緒に、また一歩踏み出そう。

 生徒手帳を開いて見える文字を見つめて思う。いつも私は立ち止まってばかりだ。

 正門玄関へ着いた時、懐かしい顔が見えた。腕組みをしながら、下駄箱に背を付けている人物と目が合う。

「よお、王子」

 久しぶりに聞く声は、少しだけ低く感じた。

「姫センパイ? ここ、二年の玄関ですよ?」
「んなこと知ってるっつの」
「もしかして、待ってたんですか? 私のこと」
「……それに答えんの、なんかしゃくだな」

 待って、くれてたんだ。なんの用だろう。

 意味もなく髪を触って、視線が定まらなくなる。
 今まで、どうやって接していたか、不思議なくらいぎこちない。
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