花姫コネクト
 ふと目の前にある花へ視線が向かう。耳元から生えた青い花が、気を落としたように下向きになっている。

「先輩の花、なんかしおれてないですか?」
「重力に従順(じゅうじゅう)なだけだ」
「絶対元気ない。ちゃんと栄養足りてます? 牛乳嫌い直した方がいいですよ」
「お前こそ。もっと飲んだ方がいいんじゃね」

 合っていた姫先輩の視線が少し下がった。
 なんとなく察しがついて、どういう意味ですかと低く答える。
 お構いなしに、姫先輩は背を向けながら振り向いた。

「帰るぞ」

 すごく自然な言葉に、ワンテンポ遅れて。

「あっ、待って下さいよ」

 言われるままに隣へ並ぶけれど、違和感が拭えない。

 今日は、河合さんと一緒じゃないんだ。思ったより、普通に話せてる……とか。

 歩幅を合わせたように、足を出すタイミングが合っている。

「どうしたんですか? 部活終わるまで待ってるなんて」

 もしかして、この間のこと気にしてるのかな。逃げるように帰ってそのままだったから、謝った方がいいかな。

「……なんだっけか」

 適当な返しに、考えていたことがキレイに流された。

「しっかりして下さいよ。魚とか緑黄色野菜、ちゃんと食べてます?」
「ボケてるわけじゃねーし」

 懐かしい空気に思わず頬がほころぶ。
 やっぱり、なにげない先輩との時間が好き。

 ーー壊れてしまったなら、また新しく作り直したらいいんじゃないかな。

 高嶺くんの言葉をふと思い出す。
 河合さんとの邪魔をしなければ、またこうして話してもいいのかな。
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