花姫コネクト
 うちのおじいちゃんが亡くなったのは、私が七歳の時だったから、正直あまり覚えていない。

 誰かを失うのは寂しいことだと理解出来るけど、声を押し殺しながら涙を流す先輩へ掛ける言葉が見つからなかった。

 ただ、肩を貸すことしか出来ない。
 ぼんやりする景色の中で、思い返すのはここへ来てからのこと。

 私、さっきなんて言った?

 ーー明日、東京どこ行くんですか? 渋谷、原宿?

 ーー今度、大路家特製クッキー焼いて来ますね! おじいさんのお見舞いにも。

 傷口を広げるようなことをして、最悪だ。


「あの……先輩」

 今更謝るのは、蒸し返すようで違う気がするけど。どうしたら正解なのか、出口が見えない。

「なんか……ごめん。キモいことして」

 引き離された体が、少しだけ後退した。いつもより下の目線にいる姫先輩は、目を伏せている。

「えっ、そんなこと……」

 濡れたまつ毛を一度(こす)って、パッと顔が上がった。赤いガラス玉のような目と触れ合って、一呼吸時間が止まる。
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