花姫コネクト
「……ありがとな」

 立つ際にくしゃっと頭をなでられて、力の抜けた足がよろけそうになった。お礼を言われるほど、何も役に立てていない。

「やっぱり、じーちゃんとこ戻るわ」

 ベンチに置いていたかばんとマフィンを手にして、頭を触りながら言いづらそうに。

「一人だったら、まだここでビビってたんだろーな。華がいてくれて、良かった」

 視線が合わなくなったのは、二人して地面を向いたから。

「……残りの時間、おじいさんの傍にいてあげて下さい」

 ちらりと上を見ると、もう一度目が合った。今度はお互い()らさずに、小さくうなずく。

「ああ、そうする」

 寂しそうな唇がわずかにほころぶのを見て、私も同じようにした。すぐには立ち直れないだろうけど、元気になってほしい。

 戻って行く背中を見送っていると、急に振り返るからドキッとした。

「あー、クッキー。今度作って来てやって。じーちゃんにも」

 パッと明るくなった表情は、さっきまでとはまるで違う。

「……もちろんです」

 あんな風に涙を流す先輩は、初めてだった。強く丈夫そうに見える男子でも、弱くなる瞬間はあるんだ。

 一番近くで寄り添える存在が、私であるならいいのに。
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