のぼりを担いだ最強聖女はイケメン辺境伯に溺愛されています
一方、王都からアニエスを連れ戻すために派遣された神官フロランとその部下は、南の大聖女ドゥニーズを訪ねて空振りに終わり、王都に戻った後で、北に向かう謎の聖女の噂を耳にしていた。
噂を追いかけ始めると、すぐに確信した。
地味なグレーのドレスを着ていて、施術の腕は驚異的。
異様に元気で、肉が好き。
「アニエスだ」
ろくに荷物も持たず、のぼりを背負って徒歩で移動しているらしい。
のぼり? と思ったが、想像してみたら、やけにしっくりきた。
「アニエスで間違いないだろう」
噂によるとフォールのトレスプーシュ辺境伯の元に向かっているらしい。
二頭立ての馬車を走らせて街道を進み始めたが、ふだんは人通りもまばらなはずの辺境へ続く道には、どういうわけか人が溢れかえっていた。
思うように馬車が進まない。
渋滞に難儀しつつも、ようやくフォール郡に入り、再び噂に耳を傾けた。
そこで聖女はなかなか可愛いと聞いて、フロラン一行は少し不安になった。
修行オタクのアニエスは、いつも鬼気迫る勢いで石段を登り、滝に打たれていた。
地味な聖女の制服を特に嫌がることもなく着続け、髪飾り一つ持っていなかったと記憶している。
顔かたちが悪いわけではないので、それなりに気を遣えば可愛いかもしれないが、今までのアニエスにはあまり使われなかった表現だ。
だが、肉は好きらしい。
「アニエス、だよな……?」
いずれにしても、ここまで来て引き返すのもアレだ。
とりあえず、フォール城まで行ってみることにした。
のろのろ進む人の波が落ち着き始め、一時はどうなることかと思えた渋滞も解消されつつある。
やがて馬車は軽快に進み始めた。
おそらく聖女はアニエスだろう。
これで、やっと連れて帰れるぞと、フロランは安堵していた。
だが、フォールに着いたフロラン一行は、そこで思いがけないことを聞かされる。
聖女は確かにアニエスだった。しかし、門を守る兵士の言葉は耳を疑うものだった。
「アニエスが、なんだって?」
「だから、もう嬢ちゃんは、閣下とラブラブなんだから、邪魔するなって言ってるんだよ」
「ラブラブとは……?」
「ラブラブはラブラブだよ」
「結婚秒読み状態ってやつだ。な、そうだよな?」
「だな!」
「つまり……?」
「つまりアレだよ。察しろよ」
「つまり、アニエスはトレスプーシュ辺境伯と婚約していると……?」
噂を追いかけ始めると、すぐに確信した。
地味なグレーのドレスを着ていて、施術の腕は驚異的。
異様に元気で、肉が好き。
「アニエスだ」
ろくに荷物も持たず、のぼりを背負って徒歩で移動しているらしい。
のぼり? と思ったが、想像してみたら、やけにしっくりきた。
「アニエスで間違いないだろう」
噂によるとフォールのトレスプーシュ辺境伯の元に向かっているらしい。
二頭立ての馬車を走らせて街道を進み始めたが、ふだんは人通りもまばらなはずの辺境へ続く道には、どういうわけか人が溢れかえっていた。
思うように馬車が進まない。
渋滞に難儀しつつも、ようやくフォール郡に入り、再び噂に耳を傾けた。
そこで聖女はなかなか可愛いと聞いて、フロラン一行は少し不安になった。
修行オタクのアニエスは、いつも鬼気迫る勢いで石段を登り、滝に打たれていた。
地味な聖女の制服を特に嫌がることもなく着続け、髪飾り一つ持っていなかったと記憶している。
顔かたちが悪いわけではないので、それなりに気を遣えば可愛いかもしれないが、今までのアニエスにはあまり使われなかった表現だ。
だが、肉は好きらしい。
「アニエス、だよな……?」
いずれにしても、ここまで来て引き返すのもアレだ。
とりあえず、フォール城まで行ってみることにした。
のろのろ進む人の波が落ち着き始め、一時はどうなることかと思えた渋滞も解消されつつある。
やがて馬車は軽快に進み始めた。
おそらく聖女はアニエスだろう。
これで、やっと連れて帰れるぞと、フロランは安堵していた。
だが、フォールに着いたフロラン一行は、そこで思いがけないことを聞かされる。
聖女は確かにアニエスだった。しかし、門を守る兵士の言葉は耳を疑うものだった。
「アニエスが、なんだって?」
「だから、もう嬢ちゃんは、閣下とラブラブなんだから、邪魔するなって言ってるんだよ」
「ラブラブとは……?」
「ラブラブはラブラブだよ」
「結婚秒読み状態ってやつだ。な、そうだよな?」
「だな!」
「つまり……?」
「つまりアレだよ。察しろよ」
「つまり、アニエスはトレスプーシュ辺境伯と婚約していると……?」