のぼりを担いだ最強聖女はイケメン辺境伯に溺愛されています
「私は、聖女の養成が始まったのは、偶然だったのではないか推論を立てました。最初の数十年は、聖女なしで王は生きていたのです。つまり……」

 四人の聖女が、何かを掴みかけたような顔を、それぞれの顔に向ける。

 ベレニスが頷いた。

「私は、泉の神様の言葉の中に、奇妙なものが混じっているのを、ずっと不思議に思っていました」

 ほかの優しい言葉とは異なる、違和感ありまくりの一言。

「おや、あんたもかい?」

 ドゥニーズがしわがれた声で聞いた。
 アニエスが「あ……」と、何かを思い出したように口を開いた。

 あれのことかしら、と。

「アニエス、あれとは何ですか。言ってごらんなさい」

「はい。私も……、なんか、ヘンだなぁと思う言葉を聞くことがあって、あんまりヘンだから、空耳かなぁと思って、なかったことにしてたんですけど……」
「なかったことに……。まあ、わかるわ。私も修行中は、そうだったもの」

 カサンドルが笑う。
 ベレニスがふうっと、ため息とも笑いともつかない息を漏らした。

「やっぱり、みんな聞いていたのね」

「聞きました」
「聞いたね」
「聞いたと思います」

 つまり、とベレニスがカサンドルを見た。
 カサンドルは知的な瞳を光らせて頷く。

「つまり、陛下がお考えの通りではないかと。私の研究内容とも、一致しますし」

 カサンドルが短い言葉で呪いのキモはそこにあると説明した。

 ドゥニーズとアニエスは「じゃあ、やっぱり……」「あれは、そういうことだったんだね」と言って苦笑した。

「そうとわかれば、王都に戻って、アンセルムとエドモン、そしてセリーヌとネリーにも通告しなくてはなりませんね」

 べレニスは言い、聖女たちの会合は幕を閉じた。
 

 
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