のぼりを担いだ最強聖女はイケメン辺境伯に溺愛されています
 くっと悔し気に唇を噛んだ王だったが、多少なりとも精神が鍛えられたせいか、諦めて、また一から石段を登ることを決意した。
 エドモンもそれに倣った。
 実のところ、慣れてくると運動をするのが楽しくなっていた二人である。

 セリーヌとネリーは呆然自失となった。

「もう、嫌……」

 思わず呟いたネリーは、急にうっとえずいた。

「ネリー?」
「どうした、ネリー」

 セリーヌとエドモンがネリーを気遣う。再びえずいたネリーを見て、セリーヌがはっとした。

「もしかして……」

 急いで石段を降りて医者を呼んだ。
 懐妊であった。

「ネリー、よくやった」

 喜ぶエドモン。ネリーとセリーヌも大喜びだった。

「しばらく石段登りは無理ですわ」
「私はネリーに付き添います」

 にっこりと微笑む王太子妃と王后。
 王太子と王は、ただ頷くしかなかった。

「う、うん……」

 アンセルムとエドモンは二人だけで石段登りを続けることにした。もともと呪いを受けているのは自分たちなので仕方ないと思った。



 
< 58 / 59 >

この作品をシェア

pagetop