身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「今気づきましたが、梓さんの着物の花は萩なんじゃないでしょうか。すごい偶然ですね。似合ってますよ」

 優しい眼差しを向けられ、ますます居た堪れなくなる。

 気づけばまだ手を繋いだ状態だ。
 これじゃあ、円満に終わって縁談が進んじゃうよ!

 私は意を決して手を離し、核心に触れた。

「あのっ……成さんは今回のお話……今日までの事情はご存知なんですよね?」

 質問が抽象的すぎたかもしれない。
 成さんはきょとんとして私を見ている。

 いや。もしかして、私が代打で来てることすら知らないんじゃ……。

 ふとひとつの不安が頭を掠めた。
 このお見合い、伯父が窓口になっていたわけだから、成さんもお父様かもしくはお祖父様が独断で話を受けたっておかしくはない。

 私がもっとかみ砕いて説明しようとした矢先、彼が答えた。

「事情と言いますと、当初のお相手だった友恵さんから梓さんに変更したことですか?」
「そ、そうです! 本当に申し訳ありません。私なんかがここに来てしまって」

 この人、すべて承知の上でここへ来たんだ。
 だったら、憤慨していたって不思議じゃない。

 そう思った私はすぐさま頭を下げる。
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