身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「ふふ。それも結局空回りで、迷惑をかけただけだったよね。ごめんなさい」
「ううん。迷惑とは思ってないよ」
「私のせいでさせられたお見合いの相手に、なにか強請られて一緒にいるんじゃないかとか想像しちゃって。梓ちゃんって一度決めたら貫き通すし、昔からなんでもひとりで頑張ろうとするのを見てたから」
「そんなことないけど……。だけど友恵ちゃん、よくひとりで乗り込んだよね。今思えば意外な行動じゃない?」
彼女はどちらかと言えば引っ込み思案なタイプ。
だからこそ、お見合い直前に家出したって話にもみんなが度肝を抜かれたわけで。
「うん。実はすごく頑張ったの。勢いで家を飛び出して、彼と初めてよく話し合って……。不満も不安も全部曝け出したらすっきりして、なんていうか……生まれ変わったってくらい違う自分になれてた……みたいな」
その言葉は頷けた。
友恵ちゃんは本当に変わった。それと、綺麗になった。
「今はお父さんにも負けないよ」
「そっか」
友恵ちゃんを変えた人に、いつか会ってみたいな。友恵ちゃんにとっての彼が、私にとっての成さんみたいなものなのかもしれない。
自然と成さんを思い出し、密かに気になっていた疑問をおずおずと口にする。
「ところで……。成さんとふたりで会って、友恵ちゃんが私を巻き込まないでって言ってくれた後……成さんはなんて言ってたの……?」
成さんからは友恵ちゃんがやってきた概要をざっくりと聞いただけ。
深くは教えてもらっていないため、その場をどう収めたのかちょっと引っかかっていた。
彼女は可愛い唸り声を漏らして考える。
「うーんとね……。梓ちゃんにはきちんと許可を得て一緒にいるって説明されたかな」
普通の答え……。いや、そうだよね。ほかに言いようもないし。
「でもそんなのどうとでも言えるじゃない? 私、端から彼を疑ってかかっちゃって」
「友恵ちゃんが? 昔から無垢で人を疑ったりしないイメージなのに」
「疑うよ~。特に彼のことになったら、つい些細なところに引っかかって疑っちゃう」
「え。そういう人なの?」
まだ知らぬ友恵ちゃんの恋人のイメージ像が、悪い印象に傾きかける。
不安な眼差しを向けると、友恵ちゃんは小さな唇に笑みを浮かべ、首を横に振った。
「ううん。迷惑とは思ってないよ」
「私のせいでさせられたお見合いの相手に、なにか強請られて一緒にいるんじゃないかとか想像しちゃって。梓ちゃんって一度決めたら貫き通すし、昔からなんでもひとりで頑張ろうとするのを見てたから」
「そんなことないけど……。だけど友恵ちゃん、よくひとりで乗り込んだよね。今思えば意外な行動じゃない?」
彼女はどちらかと言えば引っ込み思案なタイプ。
だからこそ、お見合い直前に家出したって話にもみんなが度肝を抜かれたわけで。
「うん。実はすごく頑張ったの。勢いで家を飛び出して、彼と初めてよく話し合って……。不満も不安も全部曝け出したらすっきりして、なんていうか……生まれ変わったってくらい違う自分になれてた……みたいな」
その言葉は頷けた。
友恵ちゃんは本当に変わった。それと、綺麗になった。
「今はお父さんにも負けないよ」
「そっか」
友恵ちゃんを変えた人に、いつか会ってみたいな。友恵ちゃんにとっての彼が、私にとっての成さんみたいなものなのかもしれない。
自然と成さんを思い出し、密かに気になっていた疑問をおずおずと口にする。
「ところで……。成さんとふたりで会って、友恵ちゃんが私を巻き込まないでって言ってくれた後……成さんはなんて言ってたの……?」
成さんからは友恵ちゃんがやってきた概要をざっくりと聞いただけ。
深くは教えてもらっていないため、その場をどう収めたのかちょっと引っかかっていた。
彼女は可愛い唸り声を漏らして考える。
「うーんとね……。梓ちゃんにはきちんと許可を得て一緒にいるって説明されたかな」
普通の答え……。いや、そうだよね。ほかに言いようもないし。
「でもそんなのどうとでも言えるじゃない? 私、端から彼を疑ってかかっちゃって」
「友恵ちゃんが? 昔から無垢で人を疑ったりしないイメージなのに」
「疑うよ~。特に彼のことになったら、つい些細なところに引っかかって疑っちゃう」
「え。そういう人なの?」
まだ知らぬ友恵ちゃんの恋人のイメージ像が、悪い印象に傾きかける。
不安な眼差しを向けると、友恵ちゃんは小さな唇に笑みを浮かべ、首を横に振った。