身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
2.夜は同じ部屋で
翌日は月曜日だった。
寝ぼけながら洗面所へ向かって顔を洗い、鏡の中の自分と向き合って考える。
昨日はなんだったのか。夢か幻か。はたまた全部私の勝手な妄想だったのか。
……いや、そんな妄想など一切していない。
昨日から『これは現実の出来事なのか』と何度もスマホを確認していた。
そのたび、紛れもなく【鷹藤 成】と名前が登録されているのを見ては、頭を抱えていた。
彼に『よければ連絡先を交換してほしいのですが』と頼まれて断れなかった光景は現実だったのだ。
「梓~? 朝食用意できてるわよ~」
「いっ、今行く!」
リビングからの母の呼びかけでハッとして、急いで向かう。
ダイニングテーブルに着くと、朝からから揚げが食卓に上っていた。
私は「いただきます」と手を合わせると、躊躇いもなく箸を伸ばす。
「昨日は驚いたわあ。てっきりディナーでもして帰ってくると思ったのに、梓が先に家にいるんだもの。夜ご飯はちゃんと食べたの?」
昨日、私たちは連絡先を交換した後、成さんがタクシーを手配してくれて私は帰宅した。
着慣れない着物が苦しかったから、内心すごく助かった。
あそこまであっさり別れると、『縁談を前向きに進めたい』って聞いたのが嘘のようで、だからこそ今でも実感がないままなのだ。
「家にあるもので適当に食べたよ。お母さんたちこそ、結構遅かったみたいじゃない」
「だって梓はデートだと思って。お父さんと久々にゆっくり食事を楽しんじゃった」
どうりで遅かったわけだ。まあ夫婦の仲が良いのは喜ぶところかな。
「それはよかったね」
ご飯を口に運んでいたら、いつもはあとでゆっくり朝食をとるはずの母が向かいの席に腰を下ろした。
寝ぼけながら洗面所へ向かって顔を洗い、鏡の中の自分と向き合って考える。
昨日はなんだったのか。夢か幻か。はたまた全部私の勝手な妄想だったのか。
……いや、そんな妄想など一切していない。
昨日から『これは現実の出来事なのか』と何度もスマホを確認していた。
そのたび、紛れもなく【鷹藤 成】と名前が登録されているのを見ては、頭を抱えていた。
彼に『よければ連絡先を交換してほしいのですが』と頼まれて断れなかった光景は現実だったのだ。
「梓~? 朝食用意できてるわよ~」
「いっ、今行く!」
リビングからの母の呼びかけでハッとして、急いで向かう。
ダイニングテーブルに着くと、朝からから揚げが食卓に上っていた。
私は「いただきます」と手を合わせると、躊躇いもなく箸を伸ばす。
「昨日は驚いたわあ。てっきりディナーでもして帰ってくると思ったのに、梓が先に家にいるんだもの。夜ご飯はちゃんと食べたの?」
昨日、私たちは連絡先を交換した後、成さんがタクシーを手配してくれて私は帰宅した。
着慣れない着物が苦しかったから、内心すごく助かった。
あそこまであっさり別れると、『縁談を前向きに進めたい』って聞いたのが嘘のようで、だからこそ今でも実感がないままなのだ。
「家にあるもので適当に食べたよ。お母さんたちこそ、結構遅かったみたいじゃない」
「だって梓はデートだと思って。お父さんと久々にゆっくり食事を楽しんじゃった」
どうりで遅かったわけだ。まあ夫婦の仲が良いのは喜ぶところかな。
「それはよかったね」
ご飯を口に運んでいたら、いつもはあとでゆっくり朝食をとるはずの母が向かいの席に腰を下ろした。