身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
5.薬指にキス
数日が経った。
あれから、成さんから夕花さんの話題は出てこない。
冷静に考えれば、そうそう偶然に会う機会はないだろうし、そもそも成さんが忙しい人だからこの短期間にしょっちゅう会うのは難しいと思う。
時間が経つにつれ、平静を取り戻した私は、今日も仕事に勤しむ。
データ不備がないかなど、集中して確認していたら、あっという間に昼になった。
私はお弁当を持って、休憩スペースへ移動していた際、肩を叩かれる。
「時雨さん」
「えっ。紀成さん!?」
「こんにちは。まさか本当に会えるなんて」
振り向くと、そこには日曜日に顔を合わせた剛士さんがいてびっくりした。
彼もまさに今『まさか』と言っていたけれど、本当にそう。
業種的に会う機会があるかも、とは思っていたらこんなに早く会ってしまった。
目を白黒させていると、剛士さんはビジネスライクに名刺を差し出してくる。
「お世話になっております。マチラモバイルメディア事業部本部長の紀成剛士と申します」
私も慌てて取り繕い名刺を受け取ると、あわあわとして自分の名刺を取り出した。
「あ、わたくし、ジョインコネクトデジタルコンテンツ事業部、時雨梓と申します」
名刺を交換し、改めて視線を合わせた後に彼が「ふっ」と笑った。
「自己紹介、二度目ですね。時雨さんは休憩ですか?」
「はい。ちょうど今からで……。紀成さんは……」
「こちらの広報部に用事がありまして。もう済んだのでこれから社に戻るところです」
私は紀成さんと並んで歩く。
初めてそばに立って改めてわかる。
紀成さんも成さんと同じく背が高く、スタイルがいいってこと。
眉がキリッとしていて男らしい顔立ちの彼は、どちらかといえば優しい容貌の成さんとはまた違う魅力があると思う。
現に、すれ違う女性社員の目は無意識に紀成さんを追っている。
あれから、成さんから夕花さんの話題は出てこない。
冷静に考えれば、そうそう偶然に会う機会はないだろうし、そもそも成さんが忙しい人だからこの短期間にしょっちゅう会うのは難しいと思う。
時間が経つにつれ、平静を取り戻した私は、今日も仕事に勤しむ。
データ不備がないかなど、集中して確認していたら、あっという間に昼になった。
私はお弁当を持って、休憩スペースへ移動していた際、肩を叩かれる。
「時雨さん」
「えっ。紀成さん!?」
「こんにちは。まさか本当に会えるなんて」
振り向くと、そこには日曜日に顔を合わせた剛士さんがいてびっくりした。
彼もまさに今『まさか』と言っていたけれど、本当にそう。
業種的に会う機会があるかも、とは思っていたらこんなに早く会ってしまった。
目を白黒させていると、剛士さんはビジネスライクに名刺を差し出してくる。
「お世話になっております。マチラモバイルメディア事業部本部長の紀成剛士と申します」
私も慌てて取り繕い名刺を受け取ると、あわあわとして自分の名刺を取り出した。
「あ、わたくし、ジョインコネクトデジタルコンテンツ事業部、時雨梓と申します」
名刺を交換し、改めて視線を合わせた後に彼が「ふっ」と笑った。
「自己紹介、二度目ですね。時雨さんは休憩ですか?」
「はい。ちょうど今からで……。紀成さんは……」
「こちらの広報部に用事がありまして。もう済んだのでこれから社に戻るところです」
私は紀成さんと並んで歩く。
初めてそばに立って改めてわかる。
紀成さんも成さんと同じく背が高く、スタイルがいいってこと。
眉がキリッとしていて男らしい顔立ちの彼は、どちらかといえば優しい容貌の成さんとはまた違う魅力があると思う。
現に、すれ違う女性社員の目は無意識に紀成さんを追っている。