身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「一緒に写真を撮れるパネルとかグッズとかがあって、興味を惹かれてた梓に一緒にいた男の人が『写真撮ってやろうか』って言ってた」
「あ! 思い出しました。そうそう。特大パネルがあったものだからつい……」

 パネルと聞いてすぐにわかった。

 成さんの言う通り、仕事で外出していた際にイベント開催してるのを知って興奮したんだっけ。
 一緒にいた友廣さんが気を回してくれたけど、友廣さんにそんなことさせられないし、まして仕事中だし、と遠慮したんだった。

 まさか見られていたなんて、恥ずかしすぎる……。

「上司の声かけに、仕事中だからってきっぱり断ってたの見て、融通性ないなあって笑っちゃって」
「う……」
「同時に真面目で責任感があるんだろうなあとも思ったけど」

 成さんが優しく目を細めて言うものだから、ドキッとした。

「あと、軽井沢の時と同じような途端にデレる顔がまた可愛くて。それがすごく印象強くて。あの日からここへ来る時は、無意識に梓を探してた」

 鼓動が早くなっていくのを感じる。
 彼が急に私の前に跪き、私の両手を握った。

「だから、直前に変わったお見合い相手の写真を見て本当に驚いた。父や祖父がなにか言う前に、俺がこの縁談を進めたいって言ったんだ。こんな最高の機会はないと思って」
「成さんが望んで……? そんなことはひとことも……」

 お見合いでふたりで庭園を散歩した時や、その後のデートでも話せるチャンスはあった気はするのに。
 私がぽつりと尋ねると、成さんは苦笑交じりに答えた。

「言い出しづらかったから。たまたま見かけた頃から気になってたって、普通なら怖がられるだろうし」

 怖がる……?
 お見合いの日にこの話を聞いていたら……確かに今みたいにすんなり受け入れられなかったかもしれない。

 成さんの人柄もよく知らず、そういう相手が自分に興味を持っていたと知れば、警戒しちゃうかも……。

「でも、友恵さんには梓を巻き込まないでほしいって詰め寄られて、彼女を納得させるためにすべて話したんだ」
「友恵ちゃん……?」

 いっぺんに情報が入りすぎてなかなか頭の処理が追いつかない。
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