身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 成さんは言うなり、私の手をグイッと引き、私を椅子から立ち上がらせた。

 どこへ連れられるかと思えば、同じビル内の屋上。

「成さん! 屋上なんて、勝手に入って大丈夫なんですか?」
「屋上の出入りの許可もらってあるから大丈夫だよ。このビルは知り合いが管理してるんだ」
「そ、そうなんですか」

 成さんはそう言って、屋上の扉を開けた。
 私に先を行くよう促され、おずおずと屋上へ一歩足を踏み入れる。

 瞬間、華やかな光景に思わず言葉を失った。

 コンクリの床とフェンスで囲われた無機質な屋上――だと思う。普通なら。

 けれども、今目の前にある景色は、人工芝で一本道が作られていて、その道を鮮やかな花々が彩りを添えている。
 スポットライトも浴びていて、華やかな空間となっていた。

「急いで準備してもらったから、これが限界だったけど」

 成さんは私の手を取ってはにかんだ。

 道を進んでいき、行き止まりまで行くと、そこもまたたくさんの花で囲まれていて、ちょっとしたステージみたい。
 まわりの夜景も相まって、本当に幻想的な世界だった。

「綺麗……」

 フェンスの外を眺めて思わず呟く。
 街の音が遠くに聞こえる中、成さんは至極真剣な瞳で私を見て言った。
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