身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「初めから代わりだなんて思ってない。君だけが欲しかった」

 繋がれていた左手の甲に、そっとキスを落とされる。

「凛とした梓の無邪気で可愛い笑顔に心を奪われた。一緒にいるようになってからも、自分よりも相手を思う優しい梓が魅力的だと感じたよ」

 胸が甘い音を上げていく。

 彼の唇が触れた手は熱を持って、じわじわと身体全体を侵食していく。

「俺のすべてを伝えたうえで、改めて言わせて。俺と結婚してほしい」

 成さんの情熱的なプロポーズに、私は一瞬、素敵な景色さえも忘れて彼だけを瞳に映していた。

「――はい。私でよければ」

 自分で吹っ切ったはずだったけど、やっぱり心の奥底で不安が燻っていた。
 それももう、今やすっかり消え去ってる。

 出逢って間もない人と恋に落ちるなんて現実的じゃないって、ずっと想っていた。

 それは私がそういう相手と出逢ってなかっただけだって、今ならそういう考えもできる。
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