身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「本当に?」

 成さんは目を大きくして、ぽつりと聞いてくる。

 私は彼の予想外の反応に面映ゆさを感じ、顔が綻んだ。

「本当です。私も成さんが好きです」

 照れずにスッと言葉が出てきた。
 すると、彼は私の頬に手を添え、額をコツンとぶつけてきた。

 そして長い睫毛を伏せ、至近距離で囁く。

「ほっとした。三か月で梓に振り向いてもらわなきゃって、内心すごく焦ってたし」
「全然そんなふうに見えませんでしたよ。いつも余裕そうで」
「余裕? 梓はまだ完全にはわかってないね」

 突如、成さんの声が低くなり、ドキッとする。

 ゆっくりと視線を上げて彼を見れば、精悍な顔つきだった。

「余裕なんかないよ」

 ボソッと零すなり、成さんは瞬く間にキスをする。

 重なった唇は、初めこそ外気に当たっていたせいで冷たく感じたものの、すぐに熱くなっていく。
 頬が上気する中、繰り返されるキスは次第になにも考えられなくさせられる。

 成さんは名残惜しそうに離れていくと、軽く眉を寄せて困ったように笑った。

「うれしくてどうにかなりそう」
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