身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「あ。あの……指輪なんですが、やっぱりあの指輪は立派過ぎるので普段はつけられなくて……。休日とか、お出かけのときにつけさせてもらおうかなって」

 この間、成さんが感情的になった際、『指輪をしてくれていない』と言われたのがずっと心に引っかかっていた。

 とはいえ、大きなダイヤが付いた指輪なんて、普段使いするのは憚れる。

 私が肩を窄めて成さんの返答を待っていると、彼はニコッと笑って手を重ねた。

「うん。わかってるよ。だから、今度一緒に見に行かない?」

 一緒に見に?

 すぐには理解できなくて、首を傾げる。
 すると、成さんは柔和に微笑んで指を絡めた。

「結婚指輪。それならお互いに仕事中もつけられる」
「け、結婚……」

 お見合いした上にプロポーズまで受けたにもかかわらず、私はどこかまだ実感のないままだった。そのため、急にリアルなものに感じて動揺する。

 そっか……。結婚するって正式に決まったら、これからいろいろと準備するんだよね。
 指輪もそのひとつで……。

 なんだか、指輪を一緒に選んだり、結婚式について話をしたりするのを想像するだけで気恥ずかしい。
< 169 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop