身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
今回の話は、単純に娘の私の婚期を心配して上がったものではない。元々予定されていた人間がいたのを知っている。
それは伯父のひとり娘――私の年下の従姉妹だ。
が、肝心の従姉妹の〝友恵ちゃん〟が、三日前に注文していた着物を受け取りに家を出たきり姿が見えなくなったらしい。
部屋には書き置きがあって自らの意思で家出したため、警察に捜索もしてもらえないのだと話は聞いていた。
だからきっと、その穴埋め役が同じ姓を持つ私に回ってきたのだ。
「だけど兄さんは立場もあって……。どうにか角が立たぬようにしたい気持ちはわかるしな……。なにせ今、うちと共同開発をしている相手だから波風は立てたくないし」
父はしどろもどろになりながら、背中を丸めてぼそぼそと答える。
お見合い相手というのは、日本国内で大手と言われる〝いづみフィナンシャルグループ〟の会長、〝鷹藤〟氏のご令孫。次期頭取と言われている人。
私の祖父が会長を務める大手総合印刷会社〝時雨グループホールディングス〟は、いくつも子会社がある。
そのうちのひとつ、〝株式会社SHIGUREイノベーション〟は父が任されている。
そして、いづみフィナンシャルグループと電子契約システムの共同開発をしている真っ只中だ。
ちなみに伯父が時雨ホールディングス代表取締役社長で、私は父とはまた別の子会社に勤めている。
主に出版社のパートナー企業のプラットフォーム開発や運営を行うデジタル事業〝ジョインコネクト〟という会社だ。
「向こうから反故されれば仕方がないとあきらめられたが、こちら側から断るのは
避けたいと兄さんが……」
「だけど普通そこまでして決行しようとする? 相手の鷹藤家だって、こんな話聞けば呆れて白紙に戻すでしょ」
「いや……それが、詳しくはよくわからないんだが、兄さんいわく快諾されたとかで」
「はあ!? 嘘でしょ!? もう相手側に承諾とったの!? だったら私に拒否権ないのと一緒じゃない!」
先に予定していた友恵ちゃんがこんなことになって、鷹藤側としては顔に泥を塗られた格好だ。
そのうえ、今度は私が断ったりなんてしたら……。
時雨側が二度もお見合い放棄したとして、それこそ本当に大きな影響を及ぼしかねない。
「そう、だなあ……」
父はそわそわと目を泳がせてつぶやいた。
窮地に立たされていると実感し、父が必死な理由を感じ取った。
とはいえ、お見合いはともかく、結婚は無理でしょう!
それは伯父のひとり娘――私の年下の従姉妹だ。
が、肝心の従姉妹の〝友恵ちゃん〟が、三日前に注文していた着物を受け取りに家を出たきり姿が見えなくなったらしい。
部屋には書き置きがあって自らの意思で家出したため、警察に捜索もしてもらえないのだと話は聞いていた。
だからきっと、その穴埋め役が同じ姓を持つ私に回ってきたのだ。
「だけど兄さんは立場もあって……。どうにか角が立たぬようにしたい気持ちはわかるしな……。なにせ今、うちと共同開発をしている相手だから波風は立てたくないし」
父はしどろもどろになりながら、背中を丸めてぼそぼそと答える。
お見合い相手というのは、日本国内で大手と言われる〝いづみフィナンシャルグループ〟の会長、〝鷹藤〟氏のご令孫。次期頭取と言われている人。
私の祖父が会長を務める大手総合印刷会社〝時雨グループホールディングス〟は、いくつも子会社がある。
そのうちのひとつ、〝株式会社SHIGUREイノベーション〟は父が任されている。
そして、いづみフィナンシャルグループと電子契約システムの共同開発をしている真っ只中だ。
ちなみに伯父が時雨ホールディングス代表取締役社長で、私は父とはまた別の子会社に勤めている。
主に出版社のパートナー企業のプラットフォーム開発や運営を行うデジタル事業〝ジョインコネクト〟という会社だ。
「向こうから反故されれば仕方がないとあきらめられたが、こちら側から断るのは
避けたいと兄さんが……」
「だけど普通そこまでして決行しようとする? 相手の鷹藤家だって、こんな話聞けば呆れて白紙に戻すでしょ」
「いや……それが、詳しくはよくわからないんだが、兄さんいわく快諾されたとかで」
「はあ!? 嘘でしょ!? もう相手側に承諾とったの!? だったら私に拒否権ないのと一緒じゃない!」
先に予定していた友恵ちゃんがこんなことになって、鷹藤側としては顔に泥を塗られた格好だ。
そのうえ、今度は私が断ったりなんてしたら……。
時雨側が二度もお見合い放棄したとして、それこそ本当に大きな影響を及ぼしかねない。
「そう、だなあ……」
父はそわそわと目を泳がせてつぶやいた。
窮地に立たされていると実感し、父が必死な理由を感じ取った。
とはいえ、お見合いはともかく、結婚は無理でしょう!