稲荷くんのいたずら
「にしても、桃ちゃんが授業中に寝るなんて初めてだね〜。」
「あんまり眠くならない体質だと思ってたんだけどなー。」
授業が終わるなり親友の沙織が私のところに飛んできた。
「なんか、郁也によると…」
__________お前なんか突然糸が切れたみたいに寝こけ始めたぞ。
「って言われたんだよね。」
「え…マジで。」
怖いよね、ホント。
この前SNSで多重人格の人が人格変わる瞬間っていう動画を見たんだけど、
そんな感じだったのかなって思うと
私も多重人格なんじゃないかと怖くなるわ…。
「おーい、今日の掃除当番誰だー。」
「あっはーい!
沙織ごめん。今日は先帰って。」
「はいはーい。」
私は沙織に手を振って、廊下にある掃除倉庫に向かい箒を取りに行く。
実は今日から掃除が楽しみだったりする。
なぜかって言うと、掃除当番、稲荷くんと同じなんだ。
稲荷飛鳥くん。
別に恋愛で好きとかそう言うのじゃないんだけど、
1年生の頃から気になってたんだ。
一見、髪が長めで、物静かで、インキャっぽい印象なのに
1人でいるのもよく見かけるのに、
男子と仲良く話しているのもよく見かけるような、不思議な人。
運動も抜群にできて、……とりあえずなんでもできちゃうような人。
でもどこか話しかけづらいオーラ、というか
女子と話しているのを一回も見たことなくて。
どんな人なんだろうって思ってた。
本当に下心とかそんなのはないんだけど、
女子皆んな「そういえば話したことないな〜…」みたいなそんな感じで。
そんなだから、話しかけてみようと思ってる今日この頃っす。
私はちょっとウキウキ気分でスキップ気味で
掃除場所である東階段へと向かった。