稲荷くんのいたずら

サッサッサ……


床と箒の木の枝が擦れ合う音だけが響く。



((き、気まず〜〜〜〜〜……))



私は1人冷や汗タラタラでぎこちなく掃除をしていた。


いざ、話しかけようと思うと
なにをいえばいいかわからない。


え、どうしよう。誰か。教えて。


掃除始まってから今までこれしか考えてないもんだから、
現実で自分がなにしでかしてるか分からない…。


ポンッ

「松山さん?」
「わっ!」

突然肩を叩かれた。
肩を叩いた主は…稲荷飛鳥だった。

きえええええええっっっっっっ
そっちからお出迎えっすか!?!?
え、待って待ってタンマタンマタンマバリアーーーーーー!!!!


焦る私なんか気付きもせず、稲荷くんは心配そうにこちらを覗き込んだ。

「た、体調悪いの…?」
「え……??」

あーた今なんて??
タイチョウ…????
なんのこと??


「いや、なんかぼーっとしてたし、その…今日、授業中…寝てたし……」

……ああああああああああああ!!
そーーーーーいうことでしたかーーーーー!!!


「あっいやっしっいやっ全然!!元気モリモリなんすけど!
ちょっと考え事っていうかー、そのー、まあとにかく大丈夫ですっ!」


はーーーーーー!めっっっっちゃ言い訳がましいーーーー!!!
これじゃあ嘘ついてるって思われそうーーーーー!!!


「ふっ…wあははっ…。」
「え?」

何故か稲荷くんは笑い出した。

「なんでもないよっw、ふっ…ふふっ。」
「え、絶対なんかあるでしょ。」

思わず冷静に突っ込むと、もっと稲荷くんは笑い出した。


「あははっwww、いやw元気モリモリって…w
久しぶりに聞いたなーってwww」


そう言ってしゃがみ込んで笑い出す稲荷くん。


全く褒められてる気がせんし、
むしろバカにされてる気分なのは気のせいでしょうか、ねえ?


「ご、ごめん。松山さん、だよね?合ってる?」

「あぁ、うん。稲荷くんだよね。」

「そう。1年間、よろしくね。」

「…うん。」


私達はまた掃除に戻り始める。


不思議と私も稲荷くんも笑顔になっていたってことは

知る由もなかった。
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