8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「いいえ。ローランドもトラヴィスも、この国に必要な人よ。お父様や次期王となるエリオットを守ってちょうだい」
そしてフィオナは、ドルフを抱き上げる。
「私、この子を連れていくわ」
これまでの人生で、ペットをオズボーン王国へと連れていくという発想はなかった。だが、せっかく生きるなら、かわいい相棒のひとりくらいは欲しい。それが人間だと角が立つのだ。ペットならば大きな問題とならないだろう。
やる気のなさそうに力なく抱かれていたドルフは、その言葉を聞いて耳をピンと立てた。
「クォン!」
「私は、侍女も護衛騎士も連れて行かないわ。代わりにドルフを連れていくつもり」
ドルフは喜んでフィオナの頬を舐める。くすぐったかったが、温かくもあり、フィオナの胸にも勇気が生まれてきた気がした。
「姫!」
「フィオナ!」
「ふたりとも、これは命令よ。この国に残り、エリオットの補佐をお願いします。そして……私が国のために尽くすのを見守っていてちょうだい」
凛と言い放ったフィオナに、ふたりは言葉を無くして立ちすくんだ。
咄嗟の思い付きだったけれど、ドルフだけを連れていくのはいい選択だったかもしれないと思う。少なくとも、これまでの人生ではなかった分岐点に立てたのだから。
もう若くして死ぬのはごめんだ。誰かに頼る生き方はもうやめて、自分の足でしっかり立てる人生を送ろう。
決意を新たに、フィオナは顔を上げた。