8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
生誕祭の襲撃
 生誕祭当日。フィオナは朝から十人もの侍女に囲まれ、美しく磨き上げられた。
 今回のドレスは、オスニエルのデザインを採用しており、素材にも贅が尽くされている。一見シンプルなプリンセスラインのドレスだが、同色の糸で全体に細かな刺繍がされており、今やフィオナの象徴ともなっている紐編みのお花が随所に散りばめられている。もちろん、髪飾りもお揃いである。紐編みの花はひとつひとつが小さいので、フィオナの楚々とした美しさを際立たせるのにおおいに役になっている。

「フィオナ様、お綺麗です」

 ポリーが満足そうに微笑む。

「ありがとう、ポリー。あなたも楽しんでね」

 フィオナは、この国での公式な夜会へ参加するのは、初めてだ。勝手も分からず、不安なのでポリーにも参加してもらい、傍についていてもらうことにしたのだ。
 招待状はオスニエルから用意してもらったし、サンダース男爵は喜んで、彼女に似合うドレープの美しいドレスを用意してくれた。

 彼女の相手役はカイに頼んだ。実質的にはフィオナの護衛である。夜会で個人的な護衛をつけるわけにいかないので、苦肉の策だ。

「ふたりがいてくれるなら安心だわ」

 フィオナがほほ笑むと、ポリーは意味ありげに笑う。

「でも、私はすぐオスニエル様にフィオナ様の隣を奪われる気がしています」

「そうかしら。……そうなのかしら」

 オスニエルは、正妃になれと宣言をしたあの日から、態度が思い切り変わった。

 朝食は必ず一緒に取ろうとするし、政務中も時々呼び出しては意見を聞こうとする。
 内容が国政の話なので、フィオナとしてもついつい意見してしまう。オスニエルはフィオナとの話を元に、自身の意見をまとめ、宰相や政務官たちにも見てもらっているようだ。

 そんなことが半月ほど続いた後は、王妃様に呼び出され、なぜか正妃の執務に関する勉強をさせられるようになった。
『オスニエルにね、頼まれて』と言われたときには、耳を疑った。

『……何か気の迷いなのでは?』

『あら、あなたとは温度差があるのね。オスニエルは本気みたいよ。夫は血筋にこだわるかもしれませんけれど、私は応援するわ。あの子が内政に気を向け始めたのはあなたのおかげだもの』

 予想外なことを言われ、それ以上何も言えなくなったのを覚えている。
 何よりもまずいのは、オスニエルの表情が変わってきたことだ。はにかんだ笑顔は特に危険だ。フィオナは問答無用でときめかされてしまう。そんなわけでここのところフィオナは逃げ腰だ。だって心臓に悪すぎる。
< 121 / 158 >

この作品をシェア

pagetop