8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「ポリー、犬は怖いかしら? これからも面倒見てもらわなければいけないのだけど、大丈夫?」
「……かわいらしいワンちゃんですね」
ポリーの頬が赤く染まり、口の端は自然に笑っていた。これまでの人生の中でも、こんなにうれしそうなポリーの顔は見たことが無い。
「もしかして、犬が好きなの? ドルフというのよ。私のペットなのよ」
「キャン!」
ドルフが不満そうな声を上げる。
(分かっているわよ。私がペットなんでしょ? でも今は合わせてちょうだい!)
必死に目で訴えると、ドルフは渋々といった風に頷いた。
「ではここに一緒に住むんですね! 私がお世話させていただけるんですか? うれしい! よろしくお願いします、ドルフ様!」
ポリーは恐る恐るとドルフに手を伸ばす。嫌がるかと思ったが、ドルフは彼女に撫でられてもおとなしくしていた。
「……かわいいっ。なんて愛らしいんでしょう」
(よかった。犬は好きみたい。でも、あなたがメインでお世話するのは私だけれど)
突っ込もうと思ったが、撫でられているドルフがまんざらでもなさそうなので、黙ることにした。
どうやら、ドルフのおかげでポリーの態度が柔らかくなったようだ。
先ほどまでと違い、すっかりリラックスした様子で、笑顔を向けてくる。
「あ、お部屋をご案内しますね」
扉を抜けると廊下があり、両脇に侍女の控えの間があった。廊下を抜けた先に、手前から客をもてなすための応接室、食事をしたりくつろいだりする居間、そこと続き間になっている寝室がある。応接室から見える位置に内庭があり、名は知らないが低木に花が咲いていた。
以前もそうだったが、室内の調度は簡素なものだった。あまり予算をあてられていないのだろう。
本来、いくら政略結婚だといっても、他国からの姫を迎え入れたのだから歓迎の宴くらい開くものだ。だが、ポリーに聞いても、夕食は運ばれてくるとのことで、もう今日はオスニエルと会うことさえなさそうだ。