8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

(まあ、いいわ。むしろ構われない方がせいせいするもの)

 ドルフも同じ考えのようで、与えられた室内を勝手に走りまわったかと思うと、ベッドの一角を自分の場所と決めたようで、ごろりと寝転がった。

 ポリーはドルフをほほえましく見つめた後、フィオナに対しては少し怯えたように頭を下げた。

「お困りごと、御用がありましたら、この鈴を鳴らしてくださいませ。控えの間にいるときはすぐに飛んでまいります」

「ありがとう。しばらく休むわ。あなたも下がってくれる?」

「はい。では失礼します」

 パタパタとポリーが去っていく。
 すると突然、ドルフが大きな姿に変身した。子犬の姿のときは灰色に近い毛の色をしているのだが、大きくなると銀色の毛になる。紫の瞳にも、妙に気品が感じられるのはなぜだろう。

「どうしたの急に大きくなって」

『小さいままだと話せなくて不便だ。……いや、お前に少し加護を与えたんだったな。小さいままでも通じるか』

 小爆発のような風が起こったかと思うと、ドルフが子犬状態に戻っている。

『どうだ、聞こえるか』

「分かるわ……! ドルフの言っていること」

『本当か? だったらお前、そこで四つん這いになって三回回って見ろ』

「えっと……」

 言われたとおり、四つん這いになったところで、自分のはしたない格好に気づく。

「そんなことできるわけないでしょう!」

 真っ赤になったフィオナに、ドルフはくっくっと肩を揺らしながら笑って見せた。

『ああ、おもしろい。やはりおまえはいいペットだ』

 相変わらず自分の方がペット扱いであることには不満だが、のそのそと膝の上に乗り、身を預けてくるドルフを見ていれば、行動はドルフの方がペットっぽいなと思う。
 フィオナは彼の毛並みをゆっくりと撫でる。すると気持ちよさそうに紫の目を細める。

(かわいい。まあいっか。どっちがペットでも)

 かわいいものは正義である。どちらにせよ、ドルフがいてくれることで、フィオナが救われていることには変わりない。
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