8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 政略結婚に不満だったオスニエルは、ブライト王国との国境で、フィオナを襲う計画を立てた。生死は問わなかった。仮に生き延びたとしても、輿入れ道中に襲われた恐怖で、まともな精神状態では居られないだろう。怯えて自国に戻り、彼女の方から婚約破棄してもらえばなお都合がいいと思っていた。

 だが、騎士団長の話によれば、フィオナはひとり(ペットも一緒だったが)国境の砦に赴き、平然と『一匹の狼が救ってくれた』といったのだそうだ。その際、こちらが仕掛けたことだと知っているようなそぶりもしたという。

(ただの箱入りの姫ではなかったのか)

 見た目は華奢な少女だ。年は十七といったか。銀糸のような細くきらめく髪は腰まであり、肌の色は透けるように白い。整った顔立ちをしているが、美しいというよりはかわいらしいという印象だった。腕も腰も肩も、なにもかもが華奢で、力を込めて抱きしめたら折れてしまうだろう。そんなか細い女性を妻にするのも、オスニエルの望むところではない。妻にするならば、妖艶なる美女で、夜を楽しませてくれる女がいい。

「そのフィオナはどうしている?」

 婚約者が三日も顔を出さないのだ。さぞかし落胆しているだろう。
 そう思って聞けば、ロジャーは少しばかり言いにくそうに口を開いた。

< 40 / 158 >

この作品をシェア

pagetop