8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
広大な敷地の中に城はある。王や王子が執務をし、謁見を受けるなど、政務のための場所は中央にそびえたつ城だ。右手側の棟は訓練や警備などそしてそれらの騎士や文官が住むための居住区。左手側には、国王の妻や王子の妻たちのための後宮がある。
後宮の建物は、それぞれの妃が鉢合わせしないよう複雑に間取りが構成されている。
オスニエルの後宮はフィオナひとりだが、父王には五人の妻がいる。
国王の後宮を横目に、ロジャーを従えて歩くオスニエルはため息をついた。
女好きの父はそれなりに全員に愛情をかけているようだ。王太子であるオスニエルは正妃の子だが、腹違いの兄弟はほかに四人いる。
(それも気に入らん)
幸い、長兄であるオスニエルは弟妹たちとは年が離れているし、早くから頭角を現している。そのため、次期王の立場を脅かすような弟はいない。けれど、夫が他の側妃に入れ込めば、当然正妃の立場はない。オスニエルは思春期に差し掛かろうというころから、母親にくどくどと恨み言を聞かされてきたため、どうしても自分が側妃を持つ気にはならないのである。妻はたったひとりでいい。できれば、昼も夜もオスニエルを飽きさせることのないような刺激的な女性を妻に娶りたいのだ。
(なのに、よりによってブライト王国の姫を娶らねばならないなど)
かくなるうえは、彼女に絶望してもらい、自らこの国を出たいと言わせなければならない。そのためには、最初から、女として扱わなければいいのだ。
既成事実のない、いわゆる白い結婚であれば、国の情勢が落ち着いたところで離縁できるだろう。
「ドルフ、こっちよ!」
明るい声が、オスニエルの耳に届く。オスニエルは茂みの向こう側がフィオナに与えられた居住スペースなのだと知った。
「全く、普段寝てばかりなのに、急に運動したいなんてどうしたの」
「キャン!」
「分かっているわよ。食べ過ぎたのでしょう。昨日の御夕飯、とても美味しかったもの」
フィオナ姫がペットの犬と話している。最近、上流階級の人間はペットを飼うのがステイタスとなっている。彼女がペットを連れてきたいというのもその一環なのだと思っていた。多くは、飼うことだけが目的で、世話自体は侍女がしていることが多い。だが、どうやら本当に彼女はペットをかわいがっているようだ。
後宮の建物は、それぞれの妃が鉢合わせしないよう複雑に間取りが構成されている。
オスニエルの後宮はフィオナひとりだが、父王には五人の妻がいる。
国王の後宮を横目に、ロジャーを従えて歩くオスニエルはため息をついた。
女好きの父はそれなりに全員に愛情をかけているようだ。王太子であるオスニエルは正妃の子だが、腹違いの兄弟はほかに四人いる。
(それも気に入らん)
幸い、長兄であるオスニエルは弟妹たちとは年が離れているし、早くから頭角を現している。そのため、次期王の立場を脅かすような弟はいない。けれど、夫が他の側妃に入れ込めば、当然正妃の立場はない。オスニエルは思春期に差し掛かろうというころから、母親にくどくどと恨み言を聞かされてきたため、どうしても自分が側妃を持つ気にはならないのである。妻はたったひとりでいい。できれば、昼も夜もオスニエルを飽きさせることのないような刺激的な女性を妻に娶りたいのだ。
(なのに、よりによってブライト王国の姫を娶らねばならないなど)
かくなるうえは、彼女に絶望してもらい、自らこの国を出たいと言わせなければならない。そのためには、最初から、女として扱わなければいいのだ。
既成事実のない、いわゆる白い結婚であれば、国の情勢が落ち着いたところで離縁できるだろう。
「ドルフ、こっちよ!」
明るい声が、オスニエルの耳に届く。オスニエルは茂みの向こう側がフィオナに与えられた居住スペースなのだと知った。
「全く、普段寝てばかりなのに、急に運動したいなんてどうしたの」
「キャン!」
「分かっているわよ。食べ過ぎたのでしょう。昨日の御夕飯、とても美味しかったもの」
フィオナ姫がペットの犬と話している。最近、上流階級の人間はペットを飼うのがステイタスとなっている。彼女がペットを連れてきたいというのもその一環なのだと思っていた。多くは、飼うことだけが目的で、世話自体は侍女がしていることが多い。だが、どうやら本当に彼女はペットをかわいがっているようだ。