8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
新しい流行
結婚式からひと月が過ぎる。
「すごいですよ、フィオナ様。紐編みアクセサリーは大人気です!」
最近では、髪飾りだけでなく、ブローチに仕立てたり、イヤリングに使ってみたりとサンダース商会は手広く商品開発をしているようだ。
ポリーが金貨の入った袋を掲げてみせると、ジャラジャラと硬貨のこすれる音が鳴る。お金に困っているわけでもないのに、フィオナもこの音を聞くと心が浮き立つようになってきた。
「ありがとう。そっちの紐は?」
袋を受け取ったフィオナは、ポリーが持っている新たな紐に視線をやる。
「できれば、商品がもっと欲しいのです……。これは材料で……」
「私ひとりで作れる量なんてたかが知れてるわ。これ以上の量が欲しいのなら、量産する体制を整えないといけないわね」
フィオナは手元の金貨を見る。初期投資には十分な金額が集まっていた。それに、ポリーはできなかったが、紐編みの技術自体は平民でもやれる簡単なものだ。器用な人間ならすぐに覚えるだろう。
「王太子様に許可をいただけるなら、工房を作ってもいいかもしれません。街には仕事を求める女性がたくさんいますしね」
ポリーがあっさりという。ならばそれを手助けするのもいいだろう。ただ、フィオナは自分が街の外に出られるのかがわからない。王太子妃という立場で、動こうとして許可が下りるのは、孤児院の慰問くらいだろうか。
「孤児に仕事を覚えさせるのはどうかしら」
「孤児ですか?」
「ええ。紐編みならば学がなくても習えばできるわ。孤児たちが仕事得れば、孤児院運営も楽になるでしょうし。もちろんサンダース商会が買い取ってくれればの話ですけれど」
「……それは出来栄えに寄りますね。特に高貴な方がお求めになるときは、ある程度の品質は必要になります。それに今は需要があるのです。孤児たちが技術を会得するまで待っていたら、商機をのがしてしまいます」
「そうね」
たしかにそれはそうだ。職人が少ない今の時点で、広く人に伝えるにはどうすればいいか。
しばらく考え、フィオナはいい考えを思いついた。
「では、高貴な方向けのワークショップをするのはどう? 自分で作ったものなら、下手でも諦めがつくでしょう。サンダース商会は材料の入手である程度のもうけは見込めるし」
「ワークショップ……ですか?」
「上流階級を呼び込むのに、側妃という立場は友好的でしょう?」
フィオナは片目をつぶって見せた。そして、招待状をかくため、上質の便箋と封筒をポリーに頼んだ。
「すごいですよ、フィオナ様。紐編みアクセサリーは大人気です!」
最近では、髪飾りだけでなく、ブローチに仕立てたり、イヤリングに使ってみたりとサンダース商会は手広く商品開発をしているようだ。
ポリーが金貨の入った袋を掲げてみせると、ジャラジャラと硬貨のこすれる音が鳴る。お金に困っているわけでもないのに、フィオナもこの音を聞くと心が浮き立つようになってきた。
「ありがとう。そっちの紐は?」
袋を受け取ったフィオナは、ポリーが持っている新たな紐に視線をやる。
「できれば、商品がもっと欲しいのです……。これは材料で……」
「私ひとりで作れる量なんてたかが知れてるわ。これ以上の量が欲しいのなら、量産する体制を整えないといけないわね」
フィオナは手元の金貨を見る。初期投資には十分な金額が集まっていた。それに、ポリーはできなかったが、紐編みの技術自体は平民でもやれる簡単なものだ。器用な人間ならすぐに覚えるだろう。
「王太子様に許可をいただけるなら、工房を作ってもいいかもしれません。街には仕事を求める女性がたくさんいますしね」
ポリーがあっさりという。ならばそれを手助けするのもいいだろう。ただ、フィオナは自分が街の外に出られるのかがわからない。王太子妃という立場で、動こうとして許可が下りるのは、孤児院の慰問くらいだろうか。
「孤児に仕事を覚えさせるのはどうかしら」
「孤児ですか?」
「ええ。紐編みならば学がなくても習えばできるわ。孤児たちが仕事得れば、孤児院運営も楽になるでしょうし。もちろんサンダース商会が買い取ってくれればの話ですけれど」
「……それは出来栄えに寄りますね。特に高貴な方がお求めになるときは、ある程度の品質は必要になります。それに今は需要があるのです。孤児たちが技術を会得するまで待っていたら、商機をのがしてしまいます」
「そうね」
たしかにそれはそうだ。職人が少ない今の時点で、広く人に伝えるにはどうすればいいか。
しばらく考え、フィオナはいい考えを思いついた。
「では、高貴な方向けのワークショップをするのはどう? 自分で作ったものなら、下手でも諦めがつくでしょう。サンダース商会は材料の入手である程度のもうけは見込めるし」
「ワークショップ……ですか?」
「上流階級を呼び込むのに、側妃という立場は友好的でしょう?」
フィオナは片目をつぶって見せた。そして、招待状をかくため、上質の便箋と封筒をポリーに頼んだ。