8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「あなたは……」

「氷のお姉ちゃん!」

 少女はフィオナを見つけると、一目散にかけてきた。
 カイがフィオナを守るように前に立ったので、少女は怯えたように立ち止まる。

「大丈夫よ、カイ。知り合いなの」

「ですが」

「助けて欲しいときは呼ぶわ」

 カイは一歩横にずれ、フィオナに引っ付いてくる少女を監視するように眺めた。少女はカイの動きを気にしつつも、フィオナに縋り付いた。

「お姉ちゃん! この間の、どうやって作るの? お母さんにおいしかったって言っても信じてもらえないの」

「この間の、氷のこと?」

「氷よりずっとシャリシャリしてた!」

「あれは氷を削るの。粉みたいになるまで」

「お願い! もう一度作って」

 フィオナはドルフと顔を見合わせる。

「どうしよう、ドルフ」

『さあ、作ってやればいいんじゃないか氷くらい』

「作る過程を見られるのがまずいのよ」

 ぼそぼそとフィオナがドルフと相談していると、少女の親がやってきた。

「これ、イブ。よその人に迷惑をかけてはいけません」

「このお姉ちゃんだもん。氷をくれたの」

 イブはフィオナのスカートにしがみついてしまった。困り果てていると、空気がキンと固まる。気づけば、周りの人間の動きが止まっていた。

「ドルフ、時を止めたの?」

『ああ。面倒くさいから、氷くらい早く出してしまえ』

「ありがとう!」

 イブの持っていたカップに粉状の氷を入れる。
 すぐにドルフが止めていた時を動かし、イブは突然目の前に出来上がっていた氷レモネードにびっくりする。

「これ! これだよ。お姉ちゃん魔法使いなの?」

「あ、あはは。似たようなものかしら」

「ほら、お母さんコレ!」

 レモネード液は底の方にある。混ぜてから食べるように言うと、イブの母親は半信半疑な様子でそれを口にした。

「おいしいわ」
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